発音は自分で判断

音声学の牧野武彦氏は次のように書いています。「なお、説明に従ってやってみて出せる音と、耳を澄まして聞いて真似をして出せる音が食い違っている場合、自分の耳の方を信じてください。説明はあくまでも最大公約数的な手助けで、万人に効くとは限らないからです。」つまり、音声学の調音法の説明よりは、自分で聞いた音の方がより信頼がおけると言う事です。これが事実であれば、最初から自分の発音を聞く事に専念した方がより効果的と言えます。

言語音は連続的に変化する音のストリームです。つまり音声学で定義する音素は並んでいません。発音でできる事はネイティブを真似て、その特徴を学ぶだけです。正しい音が無いのですから、その特徴に関して自分で判断するしかありません。

発音の判断を専門家に聞いてもらいアドバイスを受ける事は可能ですが、最終的には牧野氏が言うように自分が聞いて判断するしかありません。できるかできなかと言うよりはしなくてはなりません。英会話においては相手の会話を聞く必要がありますがこれを機械に代わってもらったり、先生に頼ったりする事はできないのです。相手の会話を聞いて理解するのは音を聞いて意味を理解するのですから、英語の発音の評価よりは難しいはずです。

カラオケに行って歌が下手な人でも他人の歌は評価できます。英語も歌も上手な人はリズムとか音程とかあるのでしょうが、聞けば上手いとか、下手とか判断がつきます。この歌などを評価する能力はコンピュータにできない人間の脳が持っている、優れた能力です。自分の歌でも録音して聞けば他人の歌と同じように評価できます。

良くネイティブに聞く方法がベストのように思う人がいますが本当にそうでしょうか。確かにネイティブはその言語には敏感ですがだから何ができるのでしょうか。本音はネイティブからお墨付きをもらいたいでしょうがその意味があるでしょうか。発音を聞いてくれた人がどう正直に評価するかは難しい問題です。点数を付けてくれと言われても大変難しい問題です。フィギアスケートの点数付けより客観性に欠けます。英語の発音は競技ではないのですから、そのようないい加減な判断を他人に委ねる必要もないし、受け入れる必要はまったくありません。会話学校での評価は多くの場合に流暢かどうか、表現をたくさん知っているかどうかが評価の対象で発音だけを評価するのは非常に困難です。

歌手の歌い方を評価する方法さえもないのです。カラオケの点数でもオリコンの順位でも歌の評価ができる訳ではありません。売れているから必ずしも上手いと言う訳でありません。歌手が自分の歌が上手いとか、下手とか言うのは結局自分が評価して満足せざるを得ません。歌のレッスンを受ける場合でも先生が誉めようと、けなそうと自分で評価できなければ本当に歌はうまくならないと思います。

ネイティブに英語を聞いてもらい上手ですねとお墨付きをもらっても何の評価にもなりません。日本人で「私の発音はネイティブにネイティブらしく聞こえる」と言われた人の発音で日本人訛りの人はたくさんいます。我々が日本語を習っている外国人に日本語を聞いて評価してくれと言われた場合、普通の場合は「お上手ですね」と言うと思います。親しくなった外国人なら余計に誉めると思います。

一般的にネイティブの評価などはこんなものです。仮にアドバイスをくれる程の親切なネイティブであっても、それを受けた本人が直す部分とどう直すかが明確に理解できなければ、発音が良くなる訳でありません。勉学、音楽、スポーツを学ぶ時に自分の努力の結果が良くなったかどうかの判断ができないのでは効率の良い学習はできません。英語の発音においてもまったく同じ考えでなければなりません。

結局は英語の発音を他人に評価してもらっても自分でその判断ができなければ意味が無いのです。もし営利目的の会社や人であれば意識的に褒めるかもしれません。英会話の先生や学校に聞くべきことはどのようにすれば良くなるかのアドバイスです。しかし良くなったかどうかは自分で判断ができる術を持っていなければなりません。

どんな意欲ある料理人でも旨さの度合いを判断できる人でなければ旨い料理ができないと同じです。誰かに食べさせて評価をしてもらうのは悪いことではありませんが、いくら褒められても自分でそれが旨いかどうかの客観的な判断できる能力は絶対に必要なのです。

つまり英会話では自分の発音を聞いて自分で判断するしかない理由が理解いただけたと思います。私の体験からですと自分が発音して、何度も録音して聞くことにしています。とにかく自分の発音を録音して聞くとだんだん聴く能力が付いてきます。自分の発音の良し悪しが分かります。

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